大学・学校づくり研究科 第1回定例研究会

「大学経営情報の集約・分析体制構築に向けて」

浦田広朗氏(名城大学)

平成20年5月17日


 本報告では、大学経営情報の分析体制について、大学内でのプロジェクトを通じて得た知見を報告する。

 大学の経営情報を収集し分析するには、どのような体制で行えばよいのか。これは、換言すればPDCAのCをどう行うかについての議論と言える。このチェックが正しく行われなければ、正しい経営判断はできず、そのためには正しい情報が必要である。

 海外では、こうした情報収集・分析に当たる部署としてInstitutional Research(自校研究、IR)部門があり、学生調査、卒業生調査、教員調査などを通じて経営側へデータを提供している。近年、日本でも同様の組織を置く事例も見られ、例えば、九州大学や福岡大学にそうした部署があり、独自にデータの収集や分析、データベース構築などを行っている。

 本報告では、大学経営情報の分析には、取り立てて部署を設置する必要はなく、自然発生的に行えるものであることを示したい。各大学では、既に多様なデータを蓄積している。例えば、文部科学省や大学基準協会など、外部評価機関へ提出している資料は相当な量であり、その中に含まれるデータ量は豊富である。これらを活かすことがまず第一歩である。

 例えば、名城大学でも外部へ出した資料は永久保存されている他、私学共済事業団では専用サーバでのデータ蓄積がされている。 これらでどの程度の分析ができるかを示してみたい。名城大学では、学生教員比(Student-Teacher Ratio、ST比)が、近年徐々に下がっている。しかし、全国的な平均値と比べると、名城大学のST比は大きい。そこで、仮にST比は小さい方が望ましいとすると、全国平均程度のST比にするためには、どれくらいの教員増、人件費増が必要か。具体的なシミュレーションは、当日限りの資料の通りであるが、既に大学内にあるデータだけでも経営に有用な情報は取り出せると言える。

 今回は、集計レベルのデータに基づく事例を示したが、今後の課題としては、次のことが言える。第1に、大学内で蓄積されている個人単位のデータを蓄積して、活用することが今後の課題である。第2に、名城大学では、日常業務で発生している入学時、在学時、進路のデータがあるが、これらが分散して保存され蓄積・活用されていないことも改善課題である。第3に、データ集約を専門的な組織を設置して行うか、学内プロジェクト的に行うかという議論、あるいは、取り組みを主導的に進める人材は、職員か教員かIR専門職かという議論が必要である。

»一つ前へ戻る