大学・学校づくり研究科 第2回定例研究会

「初年次基礎ゼミで学生はどこまで変容するのか?
- 学習ポートフォリオ票による分析 - 」

小柳津 久美子 氏(きゃりあ工房)
池田 輝政 氏(名城大学)

平成20年7月21日



 近年の大学生の就職内定状況は、二極化傾向があるといえる。すなわち、多くの内定を得る学生がいる一方で、全く内定を得られない学生が出てしまう状況である。この現象を調べていくと、初年次・二年次が充実していた学生ほど、就職活動での成功を収めているという傾向がわかってくる。

 そこで、近年注目されている大学教育での取り組みが、初年次教育である。本研究では、初年次の基礎ゼミにおける授業実践を通じて、学習研究の基礎スキル獲得に関する実践研究を行った。

 授業は、名城大学人間学部の1年生の必修科目である基礎ゼミが対象であり、受講者数は13人であった。授業は、Howtoを知りたがる傾向にある学生に対して、考え方を身につけることを意図して設計した。授業では、学習ポートフォリオの作成を課し、参加者は毎回の授業で数行程度の分量で、授業における気づきや感想を記入する。本研究では、このポートフォリオを通じて学生の変容を検証する。

 ポートフォリオは、心の変化、内容に対する理解、教員の発言に対する反応、毎回の到達目標とのギャップの4点を観点として分析した。学生はグループ単位で学習に取り組むが、同じグループでも個人によって全く異なる感想を持つ場合も見られた。授業では、コーネル大学式のノートテイキングについて指導したが、そうした方法論を実践できた者は数名であった。これは、授業の中で期待通りに変容できる学生がいる一方で、必ずしも期待通りの成果に到達しにくい学生がいることを意味している。

 ポートフォリオの記述から明らかになった点は、高校までの学習履歴によって、初年次基礎ゼミの成果がかなり変わるという点である。概して、総合クラスや実業校の出身者は、調べ学習の経験が豊富であり、進学校の出身者は、基礎学力が高い傾向にある。初年次教育の実践者は、学生の学習履歴と高校生活を十分に把握した上で授業を設計しなければ、設定した目標へ到達できない可能性がある。初年次教育のプログラムを整備して実施するだけでは、学生の変容を支援することはできない。

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