大学・学校づくり研究科 第3回定例研究会

「大学におけるキャリア教育の試み
- 全学共通教養科目「経営と社会」の授業分析 -」

金森 俊治 氏・ 小川 由美子 氏・ 木岡 一明 氏
(名城大学)

平成20年9月13日



 キャリア教育の必要性は、高等教育機関のみならず、初等・中等教育においても、今日その必要性が指摘されている。大学におけるキャリア教育の必要性が指摘される背景には、若年者の非正規雇用、人間関係の希薄化・小グループ化などがある。本研究は、名城大学の全学共通教育で実践された「経営と社会」の授業を、キャリア教育という視点で分析する。

 名城大学ではキャリア教育科目を設置してキャリア教育を行っているが、選択制であることと、講義中心である特徴があり、キャリア教育科目と他の授業の関連が薄いことも指摘できる。本実践は、組織マネジメントをセルフマネジメントを通じて学習する構成となっており、結果としてキャリア教育としての側面を有することになった授業といえる。

 「経営と社会」では、名城大学の1,2年生を中心に全学年・全学部から約160名の学生が参加し、前回の授業の感想紹介とコメント、講義、演習、小グループによる討議、授業後の感想記入という流れで全14回の授業を行った。多人数授業におけるグループ活動の活性化を図るため、くじによる座席指定を行う工夫を取り入れている。また、授業では、演習としてさまざまなワークシートを作成・記入する活動を取り入れている。授業は、内部環境・外部環境の分析を通じて自己の気づきを明らかにする一方、ゴールイメージと自己のミッションを明らかにし、自分の良さを活かしながら両者を接合する目標と具体的取り組みを策定する。

 このような設計の授業では、フレームワーク思考や戦略的思考といった組織マネジメント領域の学習に加え、自己肯定感や異質な他者との関わりといった領域の学習経験を得ることになった点が興味深い。これらは、学生が記述した感想の分析からも明らかである。

 また、本実践は、授業のマネジメントという点からもいくつかの特徴を指摘することができる。具体的には、大学生活をどう過ごすかという目的意識を持たせる授業である点、学生を学びの集団とするために学習規律の定着を図った点、学生の仲良しグループからの脱却を促す点、否定的な感想も授業で取り上げ学生の主体的な意志決定を促す点などである。

 本実践の分析から得られる示唆は、以下の通りである。多人数授業における学生の主体的学習を促す上で、(1)履修届け段階での履修意思確認と選抜の実施、(2)座席の指定、(3)講義時間の短縮と90分間の起伏ある展開、(4)ワークショップ活動の導入、(5)頻繁な机間指導、(6)毎回の授業後感想レポートの実施の6点が有効である。

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