大学・学校づくり研究科 第4回定例研究会

「大学経営における障害学生支援の構築
ー 先進的な大学と名城大学を例にして ー」

田中 芳則 氏

平成20年12月13日



 本報告では、大学経営における障害学生支援の構築という問題について、事例を交えて示していく。本報告では、主に聴覚障害をもつ学生の支援を中心に議論する。障害学生支援に全学で動くには、大学経営の課題としてとらえることが必要である。そこで、組織マネジメントという視点が必要になり、本報告ではこの視点から、これからの障害学生支援に必要なことを議論する。

 まずマクロな傾向について見てみると、平成18年度時点で34%の学校が情報保障を、21.4%がノートテイク・パソコン要約筆記を行っている。障害者の受け入れでは、420校が申請して総額16億円の予算が投入されている。こうした現状の中、広島大学の事例から、先進的な障害学生支援について検討する。

 広島大学は福祉系学部を持たない大学であるが、平成9年から全学体制として障害学生就学支援に組織として取り組んでいる。以後、入学前支援、学生教職員一体型授業支援、日常的支援のための拠点設置などを進めてきた。その基本方針は、(1)全ての学生に対して教育を受ける権利を保障すること、(2)評価基準を特別に設けないこと、(3)情報の伝達方法を工夫し、障害学生が不利益にならないようにする、というものである。近年では、障害学生と教職員が協力して企画作成した啓発ビデオの作成、教職員向けの就学支援手引きハンドブックの作成、専任の支援担当教員や情報支援コーディネータの採用、学内施設のバリアフリー化・ユニバーサルデザイン化などを進めている。また、ボランティアなどの支援者養成の授業を開講している点も、特色ある取り組みである。

 この事例から、新たな変革を起こす5つの条件がうかがえる。すなわち、(1)大学全体で障害者を理解すること、(2)委員会等の全学組織の設置、(3)障害学生支援の活動拠点の設置、(4)専任教職員の採用、(5)支援マニュアルによる周知である。

 名城大学でも、大学の基本戦略の中で多様な学生支援体制の確立が明示されており、今後より明確に障害学生支援を打ち出した計画が望まれるところである。ある聴覚障害学生のケースでは、専門科目へ進むにつれて友人だけのノート支援では不十分となってきたものの、組織的な支援が行えなかった。そこで、本取り組みで障害学生支援の実践を行い、実績をつくるとともに、組織的対応に向けた折衝を行ってきた。結果として、学生ボランティアが組織されるなど、一定の組織的取り組みへの道筋をつけることができた。

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