大学・学校づくり研究科 第8回定例研究会

「襷をつなぐ:校長は駅伝走者 -学校改革戦略を手法化する-」

八谷 芳樹 氏

平成21年6月20日



 本報告では、3年程度の短い期間での配置換えのある校長職にあって、持続的な学校改革につながる試みについて報告したい。以下では、2校の学校改革事例に沿って、学校改革の手法化について考える。

 報告者が校長を務めたX高校は、ニュータウンに設立された新設校であったが、近隣に後発の新設校が設置されるなどにより、生徒募集難に陥っていた。そこでは、PTAと同窓会の協力体制をつくり(ステークホルダの関与)、学校誘致時にあった地域の熱意を掘り起こすことで(外的要因の利用)、赴任後1年で志願者増に転ずることができた。次に校長を務めたY高校は、県内で最も組合の強い学校という特徴を持ちながらも、県内で有数の進学実績校として認知されていた。進学実績があるということは活躍する卒業生がいることも多く、同窓会との協働を試みることで、カリキュラム改革を行い、周年行事を活用して学校再生の足がかりとした。

 これらの事例から、校長による改革手法の一案として5つの段階を示したい。具体的には、次の5つである。(1)赴任先の現実を分析する、(2)3年間の中期計画を立てる、(3)6ヶ月後に新たな動きを確認、(4)修正を加える、(5)長期目標を再展望する。

 第1の点は、特に重要である。校長は自らビジョンを示して改革を引っ張ると考えられがちであるが、赴任校の現状を引き継ぐことがまず取り組むべき課題である。特に、名古屋市の場合、新設校で新たな取り組みを経験した校長が、伝統のある学校へ赴任する事例も多く、校長の権限を誤ってとらえがちである。

 3年間という標準的な校長の在任中で、1年目は時間をかけて校長の考え方と、構成員の考え方、前任校長の考え方を調整する期間である。この段階で、校長・教頭・事務長が三位一体という体制をつくり、職員との信頼関係の構築を進める。こうした取り組みを経ると、2年目からは、必要なことをすぐに行う循環を作ることが可能になった。具体的には、申し合わせとして、計画にないからやらない、計画にあるからやるという2つの慣例をなくすことにした。1年目の取り組みが実を結んでいると、この申し合わせが実質化し、教職員の意欲につながる。こうした取り組みの結果、離任後にカリキュラム改革を行った課程から著名な進学実績が出るなど、改革の動きが受け継がれている。

 校長が変わっても変えてはいけないものがあるし、校長在任中だけに成果を求めるのも本質ではない。本報告は、手法に沿って学校改革を行ったものではなく、学校改革に取り組んだ事例を後から振り返って手法化を試みたものである。報告者からの経験知から理論知への転換は、今後の課題としたい。

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