大学・学校づくり研究科 第11回定例研究会

「大学における組織マネジメントの課題」

雑賀 憲彦 氏

平成21年10月17日


 本報告では、大学における組織マネジメントの課題について、提起したい。ここでは、4つの問題を提起したい。第1に、大学は非営利組織であることが課題ではないか、第2に、大学の管理者は管理者教育不足ではないか?、第3に、大学で改革が円滑に進まない理由は何か?、第4に、先進大学の経営から学んでいるか?という点である。

 第1の点について、大学は収益事業をしてはいけないという意識が存在していると考えられる。日本では、非営利だから営利を求めてはいけないと考えるが、非営利組織の定義は、得られた利益の分配が禁じられているだけであり、営利を禁止しているわけではない。こうしたこともあり、非営利組織だから目標が不明確になりやすい。企業の目標は極めてシンプルで、売り上げを上げることである。そのため、行動に移しやすい。例えば、名城大学も、MS-15は良くできているが、中身が複雑すぎる。目標は3行でよいだろう。これは、どの大学にも共通に言える問題である。こうした現状では、人間の行動は分散してしまうだろう。さらに、大学は目標が不明確であるために、リーダーが不在である。そのため、多くの大学の特徴として、リーダーシップが極めて弱い。通常は、学長と理事長の2頭体制で、お互いが紳士的に遠慮しながら振る舞うという問題がある。

 組織になぜマネジメントが必要なのだろうか。それは、組織の目標を達成するためである。組織の目標が不明確なところに、しっかりした管理は存在しない。企業では、いい組織ほど、きちんとした管理を行っている。このように考えると、大学における組織目標は明確であろうか。いい組織では、壁に目標が貼ってある。組織目標の明確な大学は、管理をきちんとしようとする、モチベーションが働く。また、大学では目標を達成させるための方策が理解できていない。管理職が目標の達成方法を具体化していないため、達成が難しくなっている。

 これまでに見てきた大学は、組織目標があいまいで職員行動に統一性や目的生がなかったり、組織運営の知識の少ない人が、年功序列人事により管理職に就いている大学がある。また、トップにリーダーシップのない人が就いていたり、権利ばかりを主張し義務を果たさない部下を指導できない大学もある。

 次に、第2の問題について考えてみたい。大学の管理者には、徹底的な管理者教育が必要である。組織運営の4原則に、指揮命令系統の統一化、権限の委譲、管理範囲の適正化、役割認識の統合がある。指揮命令系統の把握は重要であり、例え学長からの依頼を直接受けても、部長に相談してから考えるという答え方ができなければ、指揮命令系統が壊れていることになる。多くの人は、部下に仕事を任せようとしないが、責任を伴う権限の委譲は、部下の成長に不可欠である。自分よりも仕事が遅い部下を教育する気持ちで教えなければいけない。適正な管理範囲は、10〜15人であろう。指示・命令と報告という双方向のコミュニケーションを行えるのはこの範囲と考えられるからだ。

 第3に、大学で改革が円滑に進まない理由としては、3つ考えられる。1つは、強力なリーダーが不在である、2つ目に、旧態依然の人事制度がやる気を削ぐ、3つ目に、複雑な組織構造の存在がある。教員が動かないなら無視してでも、進めなければ改革は進まないだろう。また、改革を是が非でも推進する人材には、それに見合う処遇をすべきである。大学のリーダーシップは、民主的で参加型の要素が強い反面、経営の意志やリーダーシップが発揮しにくい。改革を進めてきた大学のリーダーは、優れた経営能力を持ち、強力に推進するケースが常である。理事会が適切な人材をスカウトする人事を行わなければ、改革は進まないだろう。賃金制度も重要であり、職能要件書の準備等を通じて、能力主義人事を行う必要があろう。

 第4に、先進大学の経営から学んでいるかという点を指摘したい。優れた大学は、事務職員の問題提起能力が高く、教学改革をリードするのは職員の仕事という意識が徹底している。トップは、教授会と事務組織が一丸となっているかどうかは、常に観察して把握しておかなければならず、一枚岩でなければ改革は進まないだろう。

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