大学・学校づくり研究科 第13回定例研究会

「事務局職員の力量形成に関する課題と
経営政策の支援組織としての事務局体制構築」

増田 貴治 氏
(愛知東邦大学)

平成21年12月19日


 本報告では、私大マネジメント改革プロジェクトの一環として実施した、事務局職員の力量形成に関する課題について、調査データに基づいて考察してみたい。

 私立大学を取り巻く環境には、18人口の減少、増え続ける大学と入学定員の中、定員未充足大学が大学で266校、短大で243校あり、募集停止とする大学も出てきている。こうした中で、私立学校法の改正により、様々な課題に対して各学校法人が主体的かつ機動的に対処できるようになった。特に、(1)学校法人における管理運営制度の改善(理事・幹事・評議員会の権限と役割の明確化)、(2)財務情報の公開(財産目録等の関係者の閲覧の義務化)がある。こうした、私立学校の自主性を尊重しつつ、責任ある学校経営を行う条件整備が整っているにもかかわらず、理事会の意識等が本当に変わっているのかと言う点に疑問が残る。すなわち、理事会の機能強化と支援・推進する組織整備が、各大学の課題となっており、実務を担う事務職員にも経営戦略決定への情報収集と、計画立案・業務執行という役割が期待されている。

 そこで、理事会における経営戦略の決定支援、その遂行を担う事務局組織改革について調査を実施した。具体的には、(1)大学の概要について、(2)人事異動と採用について、(3)職員の研修制度について、(4)教職協働について、(5)組織運営、方針・政策について、(6)人事考課制度・人材養成についてを調査した。

 調査によると、平均的に職員は退職までに5回の人事異動を経験し、適性、経営および教学部局の経験、経営重点課題の3つを重視して、異動が決定されている。半数以上の大学は、新規採用を原則として欠員が出た場合のみに行っている。人事計画に基づいて採用している大学は、3割強である。職員研修としては、9割の大学が外部団体主催の研修を行っており、これに加えて新人研修や全員参加研修を行っている。平均的な研修参加回数は、学内で2.1回、学外で1.9回である。その費用は8割近くの大学が全額補助しているようである。こうした職員研修制度であるが、(1)体系的な研修ができていない、(2)研修による職員の成長を評価しにくいという問題が指摘されている。職員理事職がいる大学は6割以上あり、1割強の大学は、職員理事が2人以上いる。さらに、教学役職者に職員が就いている大学は3割弱ある。職員が法人や教学の会議の議決権を持つ正式構成員となっている大学が決して少なくないものの、職員の位置づけが低い、教授会の自治意識が高いという問題もあり、十分とは言い難い。管理職の制度改革として、年功制の廃止、職務内容の明確化、責任と権限の明確化を行っている大学が多く、人事考課制度がある大学は約48%、ない大学は約51%である。

 こうした調査から、次のような課題が明らかになった。第1に、事務職員の力量向上がある。具体的には、危機感の希薄さ、業務の専門性の欠如、改善意欲の不足、管理者のリーダーシップがある。第2に、事務職員管理運営への参画がある。具体的には、正式構成員としての意志決定組織への参画拡大、教育研究の充実や教育の質保障の分野での参画拡大がある。また、教学と経営は対立的な関係として語られることが多いが、両者の調整機能を組織化することも課題だろう。さらには、管理運営を担う事務職員と、教学活動を担う教育職員の間で、連携や調整を行い、専門的助言ができるようにならなければならない。第3に、体系的・総合的職員研修制度の構築である。具体的には、力量形成の体系化に基づく研修、学内外研修の効果的実施・参加、人事考課制度の活用といった課題である。これらの先進事例として、新潟工科大学、新潟青陵大学、兵庫大学、新潟薬科大学などがあげられる。これらの中には、中期計画実施の詳細なアクションプランを持つ大学、外部評価(経営品質協議会)をテコにした改革を行っているなどの事例がある。他にも愛知東邦大学では、理事職務内規の制定と人事刷新、戦略マップに基づく中期事業計画の策定、教学意志決定組織の見直しによる事務職員参画などの取り組みを行っている。

 優れたの実践事例を持つ大学では、経営政策の支援組織としての事務局体制が機能していることが指摘できよう。

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