大学・学校づくり研究科 第15回定例研究会(学校法人トップセミナーと共催)

「町全体を一つの学校とみなした五ヶ瀬教育ビジョン」

福島 一政 氏
(日本福祉大学/学校法人東邦学園)

平成22年2月20日


 経営学では強みを活かすということがよく言われる。しかし、大学経営において強みを活かしているところは少ない。本報告では、強みをつくる大学経営とはどういうものか、どういう視点でやったら良いのか、成果創出のポイントは何かということを考えたい。

 大学が現代社会で行なうべきこととして、次の4点を挙げることができる。第1は、日本の大学で多数を占めるようになった学力不足・意欲不足の学生に対して、大卒者にふさわしい力を身につけさせるような新しい教育手法や教育システムを開発するということである。第2は、世界的レベルの高度な研究をするということである。小さい大学だから高度な研究ができないということはなく、考えていけばいろいろと出てくるはずだ。第3は、他大学、地域、高校、産業界、自治体、国際関係などと連携し、それぞれの「強み」を活かした新しい価値創造ができるようにすることだ。第4は、本格的な生涯学習事業の開発である。どこでも、いつでも、学びたいと思うようになった時に学べるような仕組みを高等教育機関が作っていく責任がある。

 私立大学の収入の7~8割は学生納付金によっている。収入の大部分を学生納付金によっているのだから、教育が中心になるのが当たり前である。大学経営というと、人事・財務・総務・企画といったことだと思い込んでいる人が多いが、大学経営の中心は教育である。

 こうした中で大学の個性化が進まない。その理由として第1に、多くの大学で偏差値信仰がある。偏差値よりも、この大学でどういうことがやりたいのか、それに対して、この大学はこういうことができるというような、高校生との間でキャッチボールができるような仕組みが必要である。第2に、学生確保のテクニックに目が行きすぎている。本当にこの大学で学ぼうという学生に入学してもらうにはどうしたらいいかということをあまり考えない大学が多い。第3に、戦略の立て方が分からない、大学経営のプロが決定的に不足している。こうしたことはある種のスキルでもあるので、学んだだけではできない。体験してみなければ分からないので、実戦的な学びが必要だ。第4に、目の前の学生に向き合っていない。学生にきちんと向き合えば、自分たちの学生はこんなに良いのだから何とかしようと、教職員も思うはずだ。第5に、学生が集まりそうな学部・学科を新設する幻想にとらわれすぎている。どこの大学でも、新しい、人気のありそうな学部や学科を作ったら学生が来るのではないかと思っているが、教育の中身を魅力的なものにせずに新しい学部・学科を作っても、重荷になるばかりだ。そもそも大学は、学問・文化の継承と創造をするところだ。

 強みを活かす経営をしている大学はなかなかない。そのためには、次の8点が重要だ。第1に、教職員が自分の大学に対する現状認識を共有する。第2に、学生を中心に考える。第3に、教員・職員・学生のコミュニケーション(相互理解と信頼性)が必要だ。第4に、「誰か」のリーダーシップとミドルマネージャーの変革姿勢ということが挙げられる。最初に引っ張るのは理事長であったり、学長であったり、事務局長であったりするのだが、必ずそこでは課長などのミドルマネージャーが一緒になってやってきている。第5に、人間関係形成力のある職員を活用する。コミュニケーション能力のある職員をもっと活用していただきたい。第6に、職員への権限委譲。課長に1円の決裁権限もないようでは、仕事のやりようがない。第7に、分かりやすさ、たとえば、いろいろな冊子を作っても専門用語を多用していると理解できない。理解できないものをいくら示しても無駄だ。そうではなくて理解できるものを作る。できるだけ分かりやすく、みんながあまり誤解しないで済むような表現をしていく必要がある。戦略策定というのはそういうところにある。第8に、ホスピタリティで、強みを作ってきた大学の共通項は、職員がその責任を果たしている。

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