大学・学校づくり研究科 第16回定例研究会

「大学経営層の経営資質は研修で高められるのか?
- 欧州大学協会のトップマネジメント研修プログラムについて -」

中島 英博 氏
(名城大学)

平成22年4月17日


 本報告では、欧州大学協会が実施する学長研修プログラムを見ることを通して、学長の経営資質がOff-JT型の研修で高まるのかという問題について考えてみたい。大学における経営職育成環境は、大学・大学院の充実や、学会・研究会の活性化で、ミドルマネジャーを対象とした育成機会は充実してきたといえる。一方で、学長などトップマネジャーを対象とした経営資質向上の機会は、必ずしも充実しているとは言えない。しかし、実はこれは国際的な共通課題であり、欧州でも同様の模索が続いている。

 こうした中で、欧州大学協会は2006年に大学学長向けの研修である、Leadership Seminarを設計し、実施した。大学の国際化戦略をテーマとしたセミナーは、2部構成となっており、第1部は6月半ばに4日間、第2部は11月半ば2日間で行われた。また、第1部の前には、事前課題が課されている。このセミナーの特徴は、(1)セミナー中の参加者の中心的活動は議論であり、それも抽象的な内容を話すのではなく、自分の経験を話すことを中心とした議論であること、(2)話題提供として短い講義があるが、講義を担当するものは現職の学長や副学長、元学長や元副学長など、必ず経験者であること、(3)必要以上に長い食事時間と休憩時間が設けられ、参加者の人脈づくりを促す設計であることの3点が指摘できる。

 欧州大学協会のLeadership Seminarを見る限り、学長研修はリフレクションの機会として設計するという示唆が得られる。すなわち、Off-JTの座学だけで経営資質が高まるのではなく、参加者の過去の経験が他者の経験と経営学の理論という2つの知見を使って、参加者自身が解釈、分析、統合することで、大学経営のための持論や経営哲学を打ち立てる際に、Off-JTが機能する。経営資質は仕事上の経験を通じて開発されるという原則に沿ったものであり、その上で、適切なリフレクションの場を専門家が設計し、経験者による実施・運営がされたときに、学長研修の効果が現れるものと考えられる。

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