大学・学校づくり研究科 第17回定例研究会

「大学改革における学期のあり方に関する考察
- 教育の質保証と学生活動の視点から -」

中村 章二 氏
(愛知教育大学)

平成22年5月15日


 本報告では、大学の学期に関する考察について報告したい。文部科学省の資料によれば、セメスター制を導入している学部を持つ大学は約80%である。ここで言うセメスター制とは、1学年に複数の学期があり、1つの授業を学期ごとに完結させる制度としての意味である。この本来の目的は、1学期の中で少数の科目を集中的に履修し、学習効果を高めることにある。中教審の答申では、大学の実情に応じて多様な学期制度を設けることで、学生を学習に集中させることを意図していた。そこで、まずセメスター制の以降は改革であったのかという問題を考えてみたい。

 ここでは、国立57大学を対象に行った、独自の調査結果に基づいてこの問題を考えてみたい。まず、セメスター制への移行をいつ行ったかという問いに、ほとんどの大学が既にセメスター制へ移行しており、その多くが98年以降にセメスター制へ移行している。多様化を求めたはずのセメスター制は、逆にセメスター制へ画一化されたと言える。いわば、セメスター制以降は、外圧による変化と理解できる。次に、週複数回授業、および学期制に関連するツールについて尋ねている。週複数回授業については、語学や実験科目で行われているものの、ほとんどは通年制と同じ週1回の授業実施である。CAP制は上限20単位以上とする大学が78%あるが、これは過重労働を意味する時間数である。しかし、実際に学生はアルバイトなどをしており、余裕があるのかもしれない。GPA制は35大学で導入されているが、多くは学修指導にとどまり、学習意欲を刺激する活用をする大学は少なかった。このように見ると、週1回授業のまま、GPAは活用されず、信頼性のないCAP制のみが進行してきた現状が浮かび上がる。

 そこで、多様化の一つの方向として、3学期制が考えられる。このメリットは、多くの科目が開設できるため、医学部や教員養成学部など資格取得科目を多く開設する大学では有効かもしれない。また、小中高の学校と学期が同じになるため、これらとの連携がしやすいメリットもある。3学期制では、成績処理が多くなるデメリットが考えられるが、現在はIT化の普及で解決できるだろう。高校まで週複数回授業・3学期制で学んできた学生にとっても、違和感なく受け入れられる制度と言えよう。

 セメスター制の特徴を活かした学期運営を行う大学がある。1つは国際基督教大学であり、3学期制、1時限70分制度を運用している。また、学期ごとの履修指導に職員が関与している。新任教員にはICUイズムとも言うべき理念を指導するために、4,5人の教員がチームで新任教員を指導する。ICUの学生は、何年生という呼び方をせず、何セメスター目の学生という呼び方をする。

 こうした、学生の生活との関わりや、教育システムを運用するのは誰なのか。CAP制やGPA制の運用には、学生生活に関する幅広い知識と学生主体の考え方が不可欠である。これを担うのは学生全体を対象に仕事を行う職員であり、個別の学生を対象に仕事を行う教員とは違った力量が求められる。実際、アメリカでは80年台に18歳人口が減少する大学危機の時代があったが、教員外職員が大きな役割を果たし、危機を乗り越えた。具体的には、教育外のプロフェッショナル職員が70年から90年までの間に1割近く増え、非プロフェッショナル職員は1割以上減っている。

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