大学・学校づくり研究科 第18回定例研究会

「大学における学生支援体制の組織化
- 心的障がい傾向を有する学生へのアプローチ -」

二宮 加代子 氏
(愛知東邦大学)

平成22年6月19日


 本報告では、ユニバーサル化された大学における学生支援のあり方について考察したい。ここでは、心的障がいや身体的障がいなどに関わらず、全ての学生が大学に入学した目的を果たせるように、換言すれば、学生が成長できるように、教育を提供する大学であるために、どのような学生支援を行うかを考えたい。

 学生支援体制の変遷については、日本学生支援機構が示している、日常的学生支援、制度化された学生支援、専門的学生支援の3つがうまく整理されている。学生支援は、1953年に示された学生育助の理念にはじまると考えてよいだろう。このときは、個人の欲求を無視した大量教育のみを行うことは学生育助の観点に反すること、入学前から卒業就職に至る全ての経験に及ぶこと、成功失敗の副因となるものに関心を持つという3点を示した上で、各管理組織の係が同僚的に連携する必要性を指摘している。

 近年の学生相談では、同意や傾聴だけでは対応できず、コミュニケーションの困難さを訴える学生がいる場合もある。特色ある学生支援に取り組む大学では、個人だけを切り離してサポートするのではなく、支援者を含めた組織全体が活性化するようなマネジメントを行っている。たとえば、富山大学では、オンとオフ、すなわち、対面とオンラインを組み合わせた支援を行っている。これをマネジメントするのがトータルコミュニケーション支援室であるが、ここでは、相談にきた学生を1対1で支援するのではなく支援チームを組織する(相談にきた他部門の支援者もチームの一員として支援する)点、支援者への物理的・精神的支援を行うことで支援者の燃え尽きをなくす点、迅速な情報共有を行う点の3つの特徴が指摘できる。

 いくつかの大学の調査から、こうしたチームによる学生支援体制を組織化する上での課題を指摘したい。第1に、いろんな価値観で学生をみている現状があるが、それではチームは作れない。多様な学生を受け入れていることを、共通の基準で認識することが必要である。第2に、カウンセラーなどの専門職だけでなく、マネジメントを専門とする部署を置き、全学的認識の共通化を促進することが必要である。第3に、チームで学生を支援するということを全学的な方針とし、ある部署は個別にやりたいということをなくす必要がある。第4に、教職員の研修の実施、マネジメント部門への情報集約経路の確保、情報管理の徹底と活用、そして、こうした支援体制の学内外への積極的な発信が必要である。

 ある大学では、職員が学生にかかわるために、職員の発案と実施により、生活適応、安心できる相談相手、職員と学生の共同の機会づくりとして「スチューデントサポート制度」を進めている。これは、全ての職員が8~9名の学生を受け持ち、クラブ活動や私生活の相談、連絡先の把握、学生ポータルの利用促進、友達づくり、サークル紹介、出欠状況確認などを行うものであるが、職員の中にも、学生対応が得意な職員と不得意な職員がいる。そこで、職員を支援する職員をつける工夫をしている。

 学生支援は、相談があったりトラブルが発生した際に取り組むという消極的支援であったが、ユニバーサル化された大学における学生支援は、困ったことが起こらないよう積極的な支援を行うことが必要である。

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