大学・学校づくり研究科 第22回定例研究会

「台湾における初中等教育及び高等教育の質保証」

「台北県立淡水文化国民小学と国立台湾師範大学附属高級中学における質保証」
「真理大学と淡江大学における質保証」

韓慧英氏・遅涵氏・森山智香子氏・鷲見恵美氏
・張蕾氏・各務佳子氏・横井克典氏・鶴田弘樹氏
(名城大学)

平成22年11月20日


 本報告では、台湾における教育機関の質保証についての調査結果を示したい。具体的には、初中等教育機関に対して、学校の組織構造、および特色ある教育プログラムについて、高等教育機関に対しては学力の高い学生確保の入学試験戦略、特色ある教育プログラム、卒業時の学力の質保証の取り組みについて調査を行った。

 台湾の初中等教育は、戦後にnihonと同様の6-3-3正に移行し、68年から義務教育が9年間となった。2006年には、PISA調査において数学的リテラシーで1位になるなど、注目される国である。一方、高等教育では戦後に中央主権体制を推進した経緯があり、94年には大学法の改正により大学に自主権が与えられるものの、現在も教育部手動の体制が色濃く残っている。現在は、進学率の上昇と大学生数が急激に増加している。専門分野ごとの評価システムは75年から導入してきた点も特徴である。

 台北県立淡水文化国民小学校は、1924年設置、45年に女子公立学校から現在の校名になった。「人は人を教えて人になる」という理念のもとで、子どもが学校を好きになるようにする、教師はできるだけ楽しく授業するなど、8項目の経営方針を示している。文化の創造、創造力のかきたて、自発的に楽しく学習するという教育目標の達成に向け、国語、英語、品格教育、生態教育を重点教育として推進している。この学校では、(1)動植物を利用したカリキュラムを中心とし、地域資源と愛国心を育成する点、(2)クラブ活動をカリキュラムの中心に位置づける点、(3)英語教育の重点化、(4)教科専門教員の配置が特徴である。

 国立台湾師範大学附属高級中学校は、1937年設置、3900名の生徒と240名の教員がいる学校である。育成目標は、よい大学に入れる学生、よい資質(礼儀)を持つ学生、独立能力という3つの目標を掲げている。国立師範大学の附属学校ということもあり、一般の公立学校と比較して独自のカリキュラムと実験的なクラスが多い点が特徴である。高い進学率実績のある学校だが、その背景として、入口段階が厳しいこと、教師の質が高いこと、教育目標に一流大学に行くことを掲げていることがあげられる。組織上の特徴として、一般に選挙で選ばれる校長が、ここでは指名で選出される点、5年に1度人事を含めた評価が行われる点があげられる。

 真理大学は、7学部4研究科を持つキリスト教系の私立大学である。大学の特徴としては、学生確保の面では、推薦入試における第1段階の学科試験と、第2段階の書類審査、面接、筆記試験で決定している点、教育プログラム面では、学習チューター制度や授業時間以外に6時間の研究室滞在を求めるオフィスアワー制度などの点、卒業時の学力保証については、産業界の実務経験者を招いてカリキュラムに組み込むカリキュラム改善などがある。これらは、システマティックな管理体制によって支えられており、Input, Process, Output, Feedbackという成果志向の品質保証システムを有している。入口が厳しく、在学中は出口を意識した管理的教育が特徴とも言える。

 淡江大学は、11学部を持つ私立大学であり、学生数約28000人、教職員数2300人ほどの大学である。大学では、国際化、情報化、未来化の三化教育が理念上の特徴である。台湾の中では最も多い海外留学プログラム、台湾企業が選ぶ大学ランキングでは私立の中で13年連続1位である。教育プログラム上では、学科ごとに8〜10の身につけるべき能力の設定と一般教育科目の重視へのシフト、コミュニケーション能力を育成するためにクラブ活動の積極的推奨、教育のスタンダードを構築するために全学での共通テストなどの特徴がある。 

 日本と台湾は、少子高齢化、格差社会、高い大学進学率、高等教育のユニバーサル化という点では共通しているが、教育の質保証では、教育スタンダードを設け、卒業認定要件として卒業試験に合格すること、カリキュラム作成は教養教育の全学責任体制とカリキュラムへの産業界・OB意見の反映、認証評価においては明確なエビデンスを要求される点などに違いがある。

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