大学・学校づくり研究科 第24回定例研究会

「ニュージーランドNPM型教育改革における自律的教員像の創出」

高橋 望 氏
(日本学術振興会特別研究員)

平成23年1月22日


 本報告では、ニュージーランドにおける学校改革の前後に注目して、教員管理の実相について考察したい。ニュージーランドでは、1980年代後半より、NMPを基本理念とした大規模な教育改革を実施した。具体的には、教育委員会、学校視学官を廃止し、学校理事会の設置と第三者評価機関の新設を行っている。この背後には、1984年に成立した第4次労働党政権によるものであり、NMPによる行財政改革に端を発する。2期目の政権時の1988年に「明日の学校」と題する白書を公表し、これに基づいて1989年の教育法成立に至る。教育委員会や学校視学官は、教員管理において重要な役割を果たしていたはずであるが、これらの廃止により教員管理に大きな変化がもたらされたと考えられる。そこで、改革前に教育委員会や学校視学官は、いかにして教員管理を行っていたか、また、改革後はどのように行われるようになったか、こうした制度変容がもたらした帰結について以下では考察する。

 ニュージーランドの公務員について、NMP型行財政改革前は、国家サービス委員会というものが公務員を職階ごとに分類し、給与・昇進等を決定していた。省庁トップは任期なしの永久職であったが、組織再編後、組織の業績達成に責任を負う最高経営責任者として位置づけ、その達成のためのインセンティブ、すなわち、必要な人材等を雇用する権限等が与えられた。こうした行財政改革の影響が教員の労使関係にも大きな影響を及ぼすこととなった。同様に、改革前、学校視学官は、学校査察、具体的には、学校訪問と実態把握、政策の周知徹底と教育省への報告等の役割を担っていた。また、教員の等級づけ、教員への支援・指導助言・職能開発も行っていた。すなわち、教員は学校を訪れる学校視学官によって評価され、等級づけられていた。これが改革後、学校理事会が教員の雇用者として位置づけられ、教員は理事会の被雇用者となった。学校理事会は、「チャーター」の作成が義務づけられており、保護者や地域住民と協議の上で作成し、教育省の承認を得る必要がある。これは、学校と関係者との一種の契約であり、その履行を保証する上で、理事会にとって教員のパフォーマンス評価が避けられなくなった。

 ここで、教員登録制度に触れておきたい。1989年に教育法によって導入されたもので、完全登録教員(十分な資質能力を認められた者)、仮登録教員(教員養成機関を終了した学生)、承認必要登録教員(完全登録教員の経験がある一時離職者)の3つの枠がある。教壇に立つには、完全登録教員である必要があり、それには教職従事証明という資格取得が必要である。この証明は3年ごとに更新する必要があり、いわば教員免許更新制に近い仕組みである。この登録制度は、教員審議会によって運営される制度であるが、実際の登録確認作業は、校長の責任で各学校で行われる。よって、校長は教員登録基準に従い、それを満たしているかどうかを評価することを迫られる。

 こうした制度改革を経た結果、学校の職員室には、常時資質向上セミナーの案内が多数張り出され、教員は自らその機会を選択し参加することになった。従来、教員は視学官による等級づけを受容する受け身の立場であったが、改革後は自ら資格を得るために職能開発の機会を模索するようになった。すなわち、学校経営の自律性が求められるようになったため、教員に対しても自律性の付与、裏返せば自律的な教員であることが求められるようになった。

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