大学・学校づくり研究科 第28回定例研究会

「教養教育実施組織の変遷と課題(2)」

黒田 光太朗 氏
(名城大学)

平成23年6月18日


 本報告では,名古屋大学での教養部解体から教養教育院設置までを中心に報告したい。名古屋大学では,01年に学内措置として教養教育院を設置している。これは正式な部局ではなく,現在においても一段低く見ている文化があることは否めない。名古屋大学では,70年代前半から語学センターの設置や総合保健体育センターの設置を行っており,全国的に見てもかなり早い。早い段階から語学や体育の先生の所属部局を用意してきた特徴がある。教養部の廃止は,91年の設置基準大綱化が契機である。大綱化以降は,委員会で全学共通教育を運営することとなり,これは学部等から選出された委員で構成される全学四年一貫教育委員会(後に全学教育委員会)が運営する方式である。94年のカリキュラムでは,主題科目の重視と基礎セミナーの必修化を行っており,これを「コモン・ベイシックス」(読み・書き・話す能力)と読んで重視した。この委員会方式による運営は,2000年前後に変化を迎えることになる。大学がアカデミックプランや学術憲章を制定する中で,全学共通組織として研究拠点大学にふさわしい全学研究組織として高等研究院を,教養教育の重点大学にふさわしい全学教育組織として教養教育院を01年に学内措置で設置した

 全学教育では,基礎セミナーを文系学生4単位,理系学生2単位必修科目とする除外するとともに,研究目的のセンター,研究所については,教員定員に1/2を乗じる。 また,文系・理系の基礎科目及び教養科目の各グループ別の担当数は,有効教員数及び当該科目の担当可能教員数を勘案して定める。 すると,基礎セミナー担当数は,各グループごとの有効教員数に按分させるが,各グループ間の担当責任のバランスを調整するために修正を加えることがある,すなわちバッファとして利用することになる。これに伴って,全学教育への貢献に応じて校費の傾斜配分を行うこととした。配分は各部局で行ってもらうこととした。ただし,一人あたりコマ数では,旧教養部所属教員と数学教員のみが1.5コマあり,他の部局の平均0.6コマとの差の解消には時間が掛かることになる。

 名古屋大学の全学教育体制は,基礎教育から専門教育に亘る四年一貫教育体制の下で,基礎教育・教養教育については,教育の内容と実施の両面において,特定の部局や教員集団ではなく,名古屋大学が,大学全体として責任を負うシステムであり,この点に大きな特色がある。また,旧教養部の教員や定員に依存しない新しい実施体制であり,名古屋大学方式と呼び得よう。名古屋大学は,基礎教育を含む広義の教養教育を再検討することにより,高度な教養を備えた良識ある市民の育成という社会の要請に応える現代的教養教育のスタンダードを構築するとともに,これを名古屋モデルとして全国に発信することが求められていよう。

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