大学・学校づくり研究科 第29回定例研究会

「看護系大学教員の行う 看護実践活動の促進因子 」

若山 正代 氏
(愛知県医師会立名古屋助産師学院 )

平成23年7月16日


 本報告では,看護系大学教員の行う看護実践活動の促進因子について考察したい。現在,願ご学生の看護実践能力の低下という問題があるが,看護系大学は優秀な職業人の輩出を指名としており,教育・研究活動と連動した看護実践活動の展開を通じて,この二者間のギャップを埋めることが求められる。看護教育領域では,2009年度にカリキュラム改正があり,実習科目の増加など看護実践力の強化を意図する内容となっている。具体的には,看護基礎教育で実践する142項目の技術と各技術の卒業時の到達レベルを明示するとともに,多重課題を解決できる判断力の強化,コミュニケーション能力の向上を目指したカリキュラムとなっている。

 まず,看護系単科大学で大学の開設から4年経過している大学10校のうち,資料が入手できた9校について,現状を把握してみたい。その結果,多くの大学で,健康相談,健康診査,育児支援,人材育成,自助グループの活動支援などを行っていたが,その成果が社会に広く発信されているとは言えない。この中で,特に注目に値する看護実践活動を行うA大学について,以下で考察してみたい。A大学では,2010年に開催した事業としては,母乳育児相談,乳がん助成のためのサポートプログラム等,13の事業を行っている。この事業の特徴として,(1)私立大学であるため行政からの直接的な要請があるわけでなく,「実践重視の大学」としての伝統により教員の実践活動を展開している点,(2)開催している事業数・回数が多く,他大学に比べ年間活動日数が圧倒的に多い点,(3)ほとんどの事業を有償サービスとして提供する点,(4)教育・研究との連携が図られている点,(5)2004(平成16)年に看護実践開発研究センターを設置している点が上げられる。

 人的資源の観点から,A大学の取り組みを考察すると,関係者は「学外の仕事も沢山あるが大変でもやる時はやる」「誰かが忙しい時は他のメンバーがなんとかしていく」「学内外から評価されているという実感がある」という認識を持っている上,教員の半数以上が卒業生であり,ボランティアの活動者数が延べ645名いるという他にない特色を有する。また,活動資金の観点から見ると,「『自分の仕事をタダで売るな』という感覚が大学にも病院にもあった」「専門職としてのサービス提供に対価を払ってもらうのは当然」という認識の下で実践されている上,ほとんどの教員が外部資金を獲得していることもあり,事業の継続性・持続性を保証するものとなっている。

 こうしたA大学の取り組みを,アカデミック・ナーシング・プラクティスという看護実践活動の促進因子の観点で評価すると,次のことが指摘できる。第1に,大学のミッションの実現としての看護実践活動であることを教員が認識している点である。これは,活動に必要な資源や資金、時間の確保など、正当な要求として働きかけることができるなど,重要な点である。第2に,教育・研究活動と連携した看護実践活動である点である。学内に看護実践の場を保有することで,学生は実践の場面だけでなく実践に至るプロセスもその場で体感し学習できる長所がある。第3に,新たな挑戦と失敗を恐れない組織文化が形成されている点である。失敗も寛容に受け止め,次の挑戦を阻むことのない組織文化を形成できていることが,事業の成功を支えている。

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