大学・学校づくり研究科 第29回定例研究会

「大学病院マネジメントと大学マネジメントの共通点・相違点 」

立川 幸治 氏
(名城大学 )

平成23年7月16日


 本報告では,大学病院マネジメントと大学マネジメントの共通点と相違点について紹介したい。国立大学および国立大学病院は,独立行政法人化したが,それに伴い当時の病院運営および,医学部という教学部門との連携,大学の財務の視点からテーマについて考察したい。特に,医学部がある大学では,医学部と病院との間の厚い壁に関連した問題について考えたい。共通点と相違点という点で見れば,大学と大学病院の違いは大きくない。むしろ,大学病院と一般病院の間の違いの方が大きいと思われる。以下では,組織と人,および財務の観点から考察したい。

 医療分野は特殊な産業であり,施設設備産業であり,ヒューマンサービス産業であり,流通産業であり,研究開発産業である。どの病院も建物が立派で人が泊まる部屋が多数ある。大学のキャンパスには古い建物が見られるが,病院は使用頻度が高く,摩耗が激しい。立て替えは常にスクラップ・アンド・ビルドであり,通常のキャンパスと同様の更新計画では対応できない。また,薬や装置など多額のお金が流れる作業である。そのため,お金の要求を常にしているという特徴を有すると言える。独立行政法人化自体は,ルールが変わっただけであり,大きな変化ではなかった。しかし,何十年も適応していなかった組織に,労働基準法や建築基準法に対応することは困難であった。それに比べると,財務面の変化は大きくなかったと思われる。法人化で意図した財務改革は,自己収入を増やし,運営経費を下げることで生じる余剰を教育研究改善に使用するというものであり,実際多くの国立大学病院で取り組まれてきた。しかし,先述の通り病院はお金がかかる組織であり,建物等の減価償却費が多額で,常に巨額の負債を抱えている組織である。実際にある大学では,収益から費用を引いた額はプラスであったが,それに財投償還費を加えるとマイナスになるという状況であった。

 こうした議論は,一般病院であっても同様であるが,大学病院は一般病院とはミッションが大きく異なる。ただし,社会的意義の高いミッションほど一般に収益性が低くなる傾向があり,経営資源配分を戦略的に行う必要がある。その結果,教育中心型,地域医療貢献型,臨床主導型,研究開発型といったミッションの分化が起こるはずであるが,現状を見るとそうしたミッションを明らかにした大学病院は見られない。こうした点を考慮すると,法人化は国鉄民営化のように,債務を一旦外した上でゼロスタートすべきであったと思われる。一般に,大学は多めの予算要求をし,減額された予算が配分された後,予算を執行する。ただし,通常,健全に執行すれば予算は余るはずだがそれは歓迎されず,消化が求められる。こうした組織ではイノベーションはとても起こらない。大学の予算執行はコミットメントライン型の方が望ましいと思われる。すなわち,これだけの予算は出すという上限を定めた上で,健全な執行を行い,残った分は評価につながったり,間接経費に使える方式である。

 一般に2-6-2の法則といわれるように,どれだけ縛りをきつくしても真剣に取り組まない者がいる。エンパワーメントとは,この2-6-2を所与とした上で,底上げを図ることである。そのために教員人事は重要である。研究教育人事は,不安と懲戒から安心と緊張へと転換することが望ましい。ミッションを明確にできない背景には,専門家を専門外の者が選ぶ人事など,人材処遇面での問題が多数ある。

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