大学・学校づくり研究科 第32回定例研究会

「マネジメントはオンラインで学べるか?
―国外での教材開発事例の現状と課題―」

中島英博
(名城大学)

平成23年12月17日


 本報告では,国外の教育機関管理職向けマネジメント教育において,実験的に取り組まれている教材のオンライン化について考察したい。ビジネス・スクールの教育に代表されるように,従来経営職育成のための教育は対面教育が中心であった。具体的には,ケースメソッド教育のように,多様な職業経験を持つ学生が,ケース教材に示された情報に基づいて議論を交わし,意思決定などのシミュレーションや疑似体験を行うもので,教員と複数の学生が教室で対面する必要のある教育である。有職者が持つ職業経験をも学習資源として活用するために,学生間の議論が重要であり,学生同士が物理的に対面する必要がある点で制約の多い教育方法とも言える。また,こうした点から,ビジネス教育のオンライン化は困難であると考えられてきた。

 オンライン教育は,有職者などキャンパスへの通学が困難な学生に対して教育を提供する手段であるが,個別学習が中心となる傾向があり,知識獲得型の学習には適しているが,ディスカッションを通じて学ぶビジネス教育では取り入れられてこなかった。英国ではこの課題に取り組み,教育機関の管理職向けに教育マネジメントを学ぶ教材の開発に取り組んだ事例がある。ただし,この教材はビジネス教育の中でも知識の獲得に偏った面があり,一定の限界がある。

 戦略立案の教材を例にとれば,4ブロック23モジュールからなる教材であり,戦略プランニングの役割,プランの設定,進捗などで構成される。1つのモジュールは,テキスト,アクティビティ,補足資料の3つで構成される。このうち,アクティビティが重要な役割を果たしていると考えられる。テキストは解説や図表の提示であり,知識獲得を意図したものであるが,アクティビティではノート作成,文章回答など「自分で考える」作業が中心である。こうした自分で考える作業をできる限り一人で行うように設計することで,オンライン教材化を可能にした点が特徴である。言うまでもなく,議論の相手がいないために,ビジネス教育の大きな特徴の1つである,異なる考え方を知ったり,自分が非合理的と考えていたものの有効性を知ったいるする機会はない。1つのモジュールで学ぶことは,極めてシンプルであり学習時間も短いが,考える作業にはかなりの時間が掛かる。こうした教材開発の原則に沿うことで,オンラインでもマネジメントが学べる環境を一定程度確立することに成功している。

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