大学・学校づくり研究科 第34回定例研究会

「継続的なソーシャルスキル・トレーニングが学級適応に及ぼす効果
―朝の会・帰りの会を活用したショートプログラムの実践―」

曽山 和彦
(名城大学)

平成24年2月18日


 本報告では学校現場において見られるようになった,人とかかわる力の弱さに問題意識を持ち,短時間で行えるソーシャルスキルトレーニング(SST)の効果について考察したい。SSTの実践は増えているが,時間確保が難しいという指摘も多い。本報告ではこの点の克服に着目する。先行研究では,対人関係のコツ・技術としてのソーシャルスキルは,小4~中1までのうち高学年ほど弱いことを指摘したものがある。ソーシャルスキルを育む取り組みは,学べばよいという行動理論をベースとして構築されている。そして,それは小2~小5(児童期)の時期が重要であると指摘されている。こうしたトレーニングは,一般的に,インストラクション(言語教示),モデリング(示範),リハーサル(実行),フィードバック(評価)という手順で行われる。本報告では,公立小学校の3年生を対象として,行った実践について示したい。この学級には20名中9名の気になる児童がいる学級である。ここで,毎週火曜日の朝の会において,その週のSSTについて説明し,火曜から月曜までの帰りの会の15分でSSTを実施した。その効果を学級診断尺度を用いて,約7ヶ月の変化を測定した。

 具体的なSSTの実施方法は,次の通りである。これは「質問ジャンケン」といい,ペアで30秒間を使い,ジャンケンで勝ったら1つだけ質問をする。負けた人は質問に簡潔に答える。答えにくいものはパスしてもよく,あいさつ(よろしく・ありがとう)は必ずするという手順を示した。質問は出にくい場合も考え,出身,行ってみたい外国,好きな食べ物,テレビ番組などから質問するという枠を示すこともある。学級診断尺度は,学級満足度尺度,学校生活意欲尺度,自由記述から構成される。この尺度は,短時間(10分)程度で実施でき,気になる子どもを事前に発見できるという利点がある。学級満足度尺度(いごごちのよいクラスにするためのアンケート)は,小学校版は12問(承認6・安全6),中学校版は20問(承認10・安全10)から構成され,承認感と安全感の高低で4群にプロットされる。ただし,いわゆる「おれさま」の子も高い得点を示す傾向があるため,実際の評価は行動観察も含めて行う。

 マズローの欲求段階説に沿えば,近年,生理的な欲求さえも満たせない児童が増えている。虐待など学校教育の範囲を超えた問題にはなかなか対応が難しい。これをクリアできれば,学校が取り組めるものとして,安全・安定,所属・愛情,自尊・承認がある。教師はここに注力して児童に対応したいと考える。先に示した実践の結果,承認・安全はいずれも有意にプラスに変容した。また,学級雰囲気・友達も有意なプラス変容が見られたが,学習については有意な変容が見られなかった。こうした結果について,データのみならず行動観察も行っている。学校で統制群を用いる実験は倫理的に行いにくいため,この行動観察は重要である。これによれば,自由に動き回る場面で,ほとんどの子が自分からかかわれるようになり,帰りの会のグループでは誰と一緒になっても楽しく活動できるようになり,休み時間には男女混じってbすけっとをする姿も見られるようになった。

 こうした結果から,小林(2001)が示す学校・学級におけるSSTの4つのポイントに,短時間でできること,継続して行うことの2点を加えることができる。この6つのポイントを検証すると共に,新たなポイントの提言の可能性が今後の課題である。実践上の助言として,既にSSTはさまざまな実践や研究があるが,オリジナルなものを志向することは重要であるが,危険な面もある。先行研究や先行実践をまずは正確に理解して取り入れることである。プアなオリジナルでなく,優れたイミテーションから始めるべきである。

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